黄昏に香る音色 2
ある日、仕事から家に帰る途中…。

実家で世話を、焼いてくれていた執事と、母親が車をとめて、待ち伏せていた。

驚き、逃げようとした光太郎を、執事はやさしく諭した。

連れ戻しに来た訳じゃありません。

久しぶりに、坊ちゃまとお話がしたいだけです。

お食事でもしながら。

少し涙ぐんでいる母親を見ると、光太郎の心は、痛んだ。

元々勝手に出ていたのは、自分であり、母親には負い目があった。

渋々頷いた光太郎は、車に乗り、都内のホテルへ連れていかれた。

そこにあった贅沢な料理の数々に、光太郎は魅了された。

時を忘れ、母親や執事との食事を楽しむ。

ふっと時計を見ると、

もう遅い。

帰らないと…。

席を立とうとした光太郎を、執事が止めた。

もう奥様には、私が連絡しておりますので、

今夜はホテルで、お泊まり下さい。

光太郎は、嬉しそうに頷くと、

母親も嬉しそうに頷いた。

今夜だけ、泊まろう。

その今夜だけが…

2週間にも及ぶことになる。




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