黄昏に香る音色 2
千春は涙を拭うと、

「あたしは、どんなに貧しくても、あなたといて幸せでした」

千春は、深々と頭を下げると、

ドアのノブに手を伸ばした。

「あなたを、幸せにできなかった…あたしの責任です」

千春は、最後に笑顔を光太郎に向けた。

「別れます。これは、あたしの責任です。あたしが、あなたを幸せにできなかったからです…」

「千春…どうする気だ」

「あたしは、明日香と2人で、何とかやっていけます」

「千春…」

「何もいりません…」

千春はドアを開けた。

「失礼しました…さようなら」

千春は深々と頭を下げると、しばらくそのまま止まると、顔を上げて、笑顔のまま…ドアの外へ、消えて行った。

「千春!」

バタン…。

ドアが閉まった瞬間、

光太郎は、自分がしたことを理解した。

千春と明日香を失ったことを…。

しかし、




「仕方ないじゃないか…」

あの貧乏な生活に、戻る勇気もなかった。

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