黄昏に香る音色 2
志乃はグラス越しに、直樹を見た。

「まだ友達?その子とは」

開き直った直樹は、

「友達にやっと…近づけたぐらいです」

志乃は苦笑する。

「道のりは長いんだ」

直樹は頷いた。

志乃は、グラスに口をつけた。

「デートはした?」

「いえ」

グラスをコースターに置くと、

「したほうがいい。そうしないとわからないから…」



和美のCDが終わる。

次にかかったのは…

LikeLoveYouのCD。

かつて、明日香と啓介が組んでいたバンド。

志乃は、席を立った。

「ごちそうさま」

いきなりで、直樹は戸惑う。

「ま…また、来て下さい」

直樹の笑顔に、志乃は笑顔でかえす。

「ありがとう」

店を出る時、志乃は振り返り、

「話の続きを、きかせてもらうから」

店内に、明日香の優しい歌声が響いていた。



店をでると、志乃は携帯を鳴らした。

「アメリカで出す…アルバムの件なんですけど…」

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