天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
11時37分。

明菜達と反対方向…裏口にたどり着いた美奈子の前に、片腕を失った化け物達が立ちふさがっていた。

化け物達は、一定の距離を取りながら、決して美奈子に近付くことも…攻撃することもしなかった。

そんな膠着状態に、美奈子は苛立っていた。


しかし、二十体はいる化け物をこえて、発電所内に入るのは、至難の業だ。



ううう……。

呻くような…嘆くような声を洩らし、美奈子を見つめる者達。

美奈子は、一歩も踏み出すことができなかった。



そんな時…化け物の間から、1人の男が前に出てきた。

黒のタキシードを着た男を、美奈子は知っていた。


「あなたは…」

美奈子は、その男…マスターを睨んだ。


マスターは、深々と頭を下げると、

「やはり、来られましたか…女神よ」

顔を上げたマスターの切なげな表情に、美奈子は自然に前に出た。

「あんたらは、一体!何がしたいんだ!」

美奈子の質問に、マスターはこたえず、左右に立つ化け物と化した者達に、目をやった。

「解放状態になった彼らは、理解したのでしょう。あなたが、女神であることを…」


「女神…」

美奈子は、一度言葉を反芻した後…首を横に振り、マスターを睨んだ。

「あたしは、女神じゃない」



そんな美奈子を優しく見つめたマスターは、突然、空が暗くなったことに気付いた。

見上げると、雷雲が発電所上空を覆っていた。


「始まる…」

マスターは、天を見上げ…

「神々の戦いが…」

哀しげに呟いた。

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