天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
仁志の思いに、マスターは微笑み…そして、悲しげな表情を浮かべた。


「今回…我々は、君のようなものだけの世界を作る為…。君達を傷つける…人間というものを、排除しょうとした…しかし…」

マスターは、天井を見つめた。

「しかし…我々は、守るといいながら…人間に対して…差別しただけかもしれない」

そう言うと、マスターは仁志を見つめ、

「教えてほしい!君のような者が、どうしたら…幸せに生きれる世界をつくれるのだ!どうしたら…人は、成長し…強くなれるのだ!」


少し興奮気味のマスターの質問に、仁志は答えを持っていなかった。

「わかりません。ただ…僕は…僕だけは、そうしたいだけです」

仁志は、マスターに笑いかけ、

「他人は、わかりません。僕は、そうありたいだけです」

仁志はカップを持ち、コーヒーを飲み干した。そして、

「幸せならありますよ」

空になったカップを、マスターに見せた。

「こんなおいしいコーヒーを、出してくれる店がある。今、この時を…僕は、幸せに生きています」


マスターは言葉を失った。

「人の幸せは、気分で変わります。こんなおいしいコーヒーを飲んだら…誰だって、幸せになります」


「あ、ありがとう…」

マスターは、お礼を口にした。

「もしかしたら…人はもっと…単純なのかもしれませんね」



マスターが、仁志におかわりを入れていると、

木造の扉が開き、新規のお客が入ってきた。


「いらっしゃいませ」

マスターは笑顔で、お客を出迎えた。

ここに来れる……普通の人でないお客。

彼らに、ひとときの安らぎを与える為に。

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