天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ウウ…」

普段は、どんな相手にも怯まないアルテミアが…少し体を反らした。


明菜は、アルテミアの手を取った。

ぎゅっと握り締め、明菜は自分より、背が高いアルテミアを少し見上げながら、

「こうちゃんを…お願いします」


そう言うと、手を握り締めながら、深々と頭を下げた。


「あっ…ああ…」

アルテミアは、それしか口にできなかった。何度も、頷く。

そんなアルテミアに、明菜は笑顔を向けた。





数分後……アルテミアは、赤星家の遥か上空にいた。

逃げるように、明菜に挨拶すると、アルテミアは空に飛び上がっていた。


その為、僕は明菜にきちんとした別れの挨拶が、できなかった。


「あ、アルテミア…。明菜は、僕の幼なじみなんだから…もうちょっと…」

「幼なじみか…」

アルテミアは、呟くように言った。下を向き、小さくなっていく明菜を見つめた。 

「幼なじみということは…昔から…知ってるんだな…」

「当たり前だよ」

「そうだよな…」

声のトーンが、低い。

「な、何だよ!」

僕には、意味がわからない。


「だって…今の女…。お前のこと好きだろ?」


「え?あっ…」

僕は、口籠もってしまった。

もう明菜を確認できない。

アルテミアは、眼下の街並みを眺めながら、

「いいのか…?この世界を、後にして…」

アルテミアは、気を探った。

まだ完全に目覚めていないが…内部に種を持った者は、何人もいる。


「いいんだ…今は…」

僕はピアスから、この世界を見つめながら、

「この世界にも…守る決意をした…力ある者もいる」

僕はピアスの中で、微笑んだ。

そして、僕は叫んだ。


「帰ろう!ブルーワルードへ!」

僕の声に、アルテミアは頷いた。

「それに、やつらにも…借りがある!」

僕の脳裏に、バイラの顔が浮かぶ。

(綾子の突然の暴走……あれは、おかしい)

冷静に考えると、あれはおかしかった。


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