天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
(それに…………リンネ)


なぜ、僕を助けたのか。

その理由が、わからなかった。

(僕は、彼女の妹…フレアを守れなかったのに…)



それらの疑問を解消する為にも、僕は…ブルーワルードに行かなければならなかった。



「モード・チェンジ!」

アルテミアの姿が変わる。

黄金の鎧に、六枚の翼を広げ、僕は天高く…飛んでいった。




明菜は、満天の星空を見上げる。

アルテミアの姿も、もう星の一つだ。

彼らが無事に、時空間を越えれることを願った。



「明菜ちゃん!」

赤星家の玄関が開き、浩一のお母さんが出てきた。

「どうしたの?」

明菜は頭を下げた後、母親から預かったものをポケットから、出した。

「今月の町内会の予定です」

明菜から、予定表を受け取った母親は、

「ありがとうね。わざわざ…。ほんと、うらやましいわ。沢村さんちは…こんな娘さんがいて…。あたしも、子供つくるんだったわ」

「え?」

浩一の母親の言葉に、明菜は絶句した。

「あら?やだ〜」

母親は妙に照れて、

「この歳じゃ〜無理よね」

と、笑った。



家の中に戻っていった母親の背中を、明菜はただ…目を丸くして、見送ってしまった。

はっとして…表札を見たが……赤星の文字の横に、


浩一と綾子の名前はなかった。

この表札を…さっき、赤星は見ていた…。



明菜は知らない…。

それは、綾子がしたことを…。母親を殺せなかった綾子は、

せめて…母親から自分の記憶を消したのだ。

それは…綾子自身がしたのか…はたまた…マスターがさせたのかは、わからない。



明菜は、そのことに絶句した後…

涙した。

忘れさせること…それが、一番よかったのだろうか…。


人は都合よく…忘れられたら、幸せなのだろうか…。

明菜は改めて…世界が、変わっていくことを実感していた。



(だけど…こうちゃん。あたしは、忘れないから…。絶対に)

明菜は心の中で、誓った。


天空のエトランゼ。

哀しみの饗宴編………完。


< 1,041 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop