天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
儚く
「人の命は…儚いです。我らの命に比べましたら…その短さは、一瞬…」


命ある…と感じられるものがない…無機質の城。

その城の最北部にある牢獄のような…四角い浮遊する物体の中に、空牙とカイオウはいた。

物体の中から、唯一外を見れる丸い窓から、空牙は外を眺めていた。

魔界といわれる世界……。何もない世界。

空気は棲んでいたが…王であるレイが、生きているものを否定していた為…砂と岩しかない。

草を生やすことを、禁じていた。




「生とは、奪うものである!我以外に、生はなく…我以外に生きる価値なし!我以外の者は、我の為に、消費される物である!」

レイの言葉は、絶対だった。


「ならば!」

空牙は、カイオウを見た。

カイオウは頭を下げた。

そんなカイオウを見下ろしながら、

「ならば…なぜ、人を生かしている……」

空牙の言葉に、カイオウはこたえる。

「恐れながら…申し上げます。我ら…魔とは違い…人には、絶望があります」

「絶望……?」

空牙は、眉をひそめた。

「はい」

カイオウはゆっくりと、頭を上げ、

「絶望…。それは、無力…つまり、弱さの果てにあります。王は、人の絶望こそ…最高の味だと申しております」

カイオウは、目を細め、

「生きたいのに…生きれない。その殺那の絶望こそ、美味だと…」


レイにとって…人はそれぞれ違う味が楽しめる…食料でしかない。


「ならば!」

空牙は、カイオウを睨んだ。

「この世界の人間で、いいだろう!わざわざ…別の世界に行かなくても!」

「そ、それは…」

カイオウは言葉なく…その場で跪いた。



「あの世界には…特別な人間がいるからよ…」

突然、カイオウの後ろに、1人の女がテレポートしてきた。

「フン」

空牙は、その女を見て、鼻を鳴らすと、視線をそらした。

「こ、これは…これは…」

カイオウは跪きながら、後方に移動した。


死の女神…デティーテェ。

レイの作り出した…最強の女神だった。

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