天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
デティーテェは口元に冷笑を浮かべながら、空牙に近づくと、

顔を背けていた空牙の顎に手をかけ、無理矢理自分の方に向かせた。

「なんて態度なのかしら?魔王レイの娘にして…跡取り。そして、あんたの姉であるあたしに対して…何?」

空牙は、デティーテェを見ない。

デティーテェはそんな空牙に、顔をしかめると、顎から手を離すと、突き放した。

少しふらついた空牙は…思わず、デティーテェを睨んだ。

デティーテェは冷笑から、嘲りに表情を変えた。

「やる気?この家畜臭い…くそガキが!」

デティーテェの目が赤く光り、空牙を射ぬく。

しかし、空牙は体勢を整えると、微動だにせず…デティーテェの瞳を見る。

その瞬間、デティーテェは後退った。

「な!」

絶句するデティーテェの姿が変わろうとした時、立ち上がったカイオウが素早く、間に割って入った。

「…で、デティーテェ様は…何用で?」

カイオウはじっと、デティーテェの目を見た。

「く…くっ!」

デティーテェは顔を背けると、カイオウと空牙に背を向けた。

「お、王からの…ご命令よ…」

デティーテェは、肩を震わせながら、

「もう一度…あの世界に行けと!そして…ある人間を連れて来いと」


「ある人間?」

空牙は、デティーテェの背中を睨みながら、きいた。

「そうよ!」

デティーテェは強がりながらも…震えていた。

その震えは、怒りではなかった……恐怖だ。

空牙の底にある…恐ろしい力…。

魔神であるデティーテェの直感が、告げていた。

(こいつを…刺激するな)

と…。

しかし、デティーテェはその恐怖を、悟られてはいけないと思っていた。

怒りに、演出しないといけなかった。

「魔王のご命令よ!あの世界で、樽を探せと…」


「樽?」

空牙には、意味がわからない。

「生命の樽よ」

デティーテェは空牙に、命令を伝えていたが…その言葉の意味を、理解してはいなかった。




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