天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
(魔ではない……この感覚は…しかし)

空牙は、梓よりも髪の長い女を見つめ、

(普通の人間ではないな)

その場で、少し考え込んでしまった。


「き、君は…この学校の生徒じゃないね」

思いを巡らしていた空牙の後ろから、がに股で頭の薄くなった中年の男が、近づいてきた。

空牙は、その男を無視した。

男は大袈裟に、空牙の前に回り込んで、顔を覗き込んだ。

「今日は、転校生が二人来ると聞いていたが……二人とも、女の子のはずじゃが…」

訝しげに顔を近づけてくる男に、空牙は笑いかけた。

「いやだな〜あ…先生…。雷ですよ。雷」

「ライ…?」

首をかしげた男を見る空牙の目が、妖しく光った。



「ライ……ライ…ララ…ライ……雷君かあ!ごめん、ごめん!」

男は照れ笑いを浮かべ、頭をかいた。

「そうですよ。転校生と同じクラスの…」

空牙の言葉を反復するように、男は話しだす。

「転校生と同じクラスの………………3年3組の雷君か!」

(3年3組か…)

空牙は笑いかけながら、さらに心の中で、ほくそ笑んだ。

「じゃあ…失礼します」

空牙は、男に頭を下げた。

「あっ!ああ…」

男は、右手を上げた。


空牙は、男に背を向けて歩きながら、心の中で考えていた。

(この学校全体に、結界を張るか?しかし…あの女の正体がわからない…。下手に動けん)

空牙は邪魔くさいが、一人一人に、暗示をかけることにした。

足を止め、振り返った。もう数人の生徒が…校門をくぐろうとしている。

(暗示を呪いにするか)

空牙は、校門に戻り、数人の生徒に暗示をかけた。

そして、命じた。

今から校門に立ち…登校してくるすべての生徒に、暗示をかけろと。

十人の生徒が頷き、校門や裏門…生徒や先生が通る場所にも、数人をまわすことにした。


「学校か……初めての体験だな」

空牙は、詰襟を指で確認すると、梓達が入った校舎に向かった。




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