天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「もう夕方になるよ…」

フレアの言葉に、リョウは頷き、海に背を向けた。

(どうして…)

リョウは歩きだす前に、天を見上げた。

(なぜ…海は果てまで見えるのに……空は、見えないだろ…)

空は、結界が太いと言われていた。

何でも、魔王の力は空から降ってくるらしい。


伝説では、夜になると…星というものが、輝いているらしい。

昼は、太陽だけ見えた。

結界が、保護フィルターになっているのか…燃えている惑星を見ることが、できた。

(太陽は、守り神なんじゃよ)

この島で、一番年寄りだった大統領が、学校に講演に来た時、言っていた。



(太陽……) 

リョウは、何か心に引っ掛かっていた。それが、なぜ引っ掛かるのかは、わからなかった。


「いくぞ。リョウ」

俊介は、先に歩きだした。

フレアは、リョウが歩きだすのを待っていた。

「早くしないと、夜が来るよ。夜は…危ないよ」

フレアは、足を止めてしまったリョウを少し急かした。


「夜なんて…」

リョウは、イラッとしてしまった。

大体、結界で守られた島に、夜に何があるというのだ。

襲うとしたら、人しかいない。



(いや…襲うかもしれない)

リョウは、考えを改めた。


結界が消えるといわれる期限を、一年切った頃から、

島は絶望とともに、ある種の興奮状態にはいっていた。

リョウ達よりも、少し上の二十歳くらいの若者は、魔物と戦うことを決意していた。

剣を練習する者。銃を持つ者。

魔法は使えなかった。

力を貸す聖霊や妖精は、いなかった。

残った科学というものに、すがりついていたが…まったく、鉱物資源がない島にあるのは……

島に避難していた人々が、持ってきた鉄屑だけだった。

島は、地下水が湧いたし…大きな湖が、中央にあり、

三百年前は、殆んどが木々に覆われていた。

それを切り開き、家をつくり、畑を作った。

三百年なんて、あっという間だったのかもしれない。




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