天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「リョウ!」

結界の向こうを眺めるリョウに、近づいてくる者がいた。

「また…海を見てるの?」

リョウの隣に立ち、海ではなく、リョウの横顔を見つめる少女。

フレア・ピアソラ。

14歳。

リョウの幼なじみであり、リョウとほぼ同じ時間に生まれた。

確か…1分も違わない。


「相変わらずだな」

少し遅れて、相葉俊介がやってきた。

リョウを入れた三人が…ラストチルドレンだった。

希望のない未来に、生まれた子供達。

「な〜んにも、ないのによ…海なんて!それなのに、入ることができないんだぜ」

俊介は崖の端から、下を見下ろした。崖にではなく、張り巡らした結界に、波が当たり、跳ね返っているのが、わかった。

「生まれてこの方…魔物なんて、見たことないよな」

吸い込まれそうな感覚を、首を振って振りほどいた俊介は、端から少し離れた。

「そうよね…」

フレアが頷いた。

事実…雷が走ってから、島の人々は、魔物を見たことがなかった。

それまでは、毎日のように、魔物が出現してたらしい。

リョウの母であるサーシャが、語ってくれた。

いつも海を見ると、巨大な黒い影が、数体…島を囲み、じっとこちらを監視するように見ていたと…。

空には、ドラゴンの群れが定期的に、飛んでいるのが…結界の上に、見えたらしい。



しかし、結界にヒビが入った時から、魔物はこの島に近づかなくなった。

ある者は、もう魔物は攻めてこないといい…、

ある者は、最後の繁栄を味合わせ、さらなる絶望を与える為と言った。


だが…楽天的になれなかったのは、結界が張られて守られているという事実と……

減っていく人口だった。

三百年前から、人類は増えてはいなかった。

逆に、半分近くに減っていた。

理由は、この島で生産できる食料の絶対数と、集めれた時の人類の殆んどが、高齢者であったということだろう。

戦えた若い者達は、殺されていたからだ。
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