天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ロバートは息子の願いに、黙って座ると、目をつぶり…腕を組んだ。

しばらくして、目を開けると、

「リョウ…座りなさい」

リョウの顔を見据えた。

先程とは違い…あまりにも澄んだその瞳に、

リョウはただ頷き、椅子に座った。

ロバートはリョウを、優しく見つめながら、

「十字架の刻印…の昔を知ってるね」

リョウが頷いたのを確認して、ロバートはきいた。

「だったら…お前は、天空の女神の名前を覚えているか?」

ロバートは、リョウの瞳の奥を覗くように、少し顔を近付けた。

リョウは思わず、身を反らし、

「あの話には、天空の女神としか…書かれていないよ…。名前なんて…知らないよ」

リョウの言葉に、ロバートは肩を落とし、椅子に座りなおすと、ため息をついた。


「女神には…名前があった。しかし……それは、なぜか…失われている…」

ロバートは再び、リョウを見ると、

「それだけではない。もっと大切な…もっと大切なことを…我々は、忘れている」

リョウには、ロバートが自分を見つめながら、なぜか…遠くの方を見つめているように思えた。


「私達は、長年の研究で…先祖が残してくれた記録から…一つのキーワードを見つけることが、できた…」

「キーワード?」

ロバートは頷き、

「それは…バンパイアキラー」


「バンパイアキラー…」

「そうだ!それは、魔王を倒すことができる…唯一の武器らしい…」

「それは、どこにあるの!」

興奮して、立ち上がったリョウに、ロバートは微笑み…、

「わからん…」


その答えに、リョウは崩れるように、椅子に座った。

「なあんだ…」

やっと見つけた希望だったのに…。その希望は、すぐになくなった。

残念そうに落ち込むリョウに、ロバートは咳払いをすると、少しの希望を与えた。


「アテはある…」


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