天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「多分だが…いや、もしかしたら……だが」

ロバートの言葉に、リョウは息を飲んだ。



「岬に突き刺さっている…女神の剣だ…」


「女神の剣!?」


それは、天空の女神がこの島に、結界を張るときに、始点として突き刺したといわれる剣だった。

十字架のような形をした…その剣は、三百年の時を経て、まるで墓碑のように突き刺さっていた。


「だけど…剣を抜いたら…結界が消えちゃうんじゃないの?」

リョウのもっともな意見を、ロバートは首を横に振って、否定した。

「管理局が調べたところ…あれから、結界が発生していないことが、わかっている」

「え」

「あの剣を突き刺した瞬間、女神は消滅したという…それは、まるで…誰かに剣を託すようだったと…述べる者もいる」

「誰か…見てたの?女神の最後を」

ロバートは頷き、

「剣の防人がな…」

「防人…?」

リョウは、きいたことがなかった。

「いるんだよ。岬の近くに、剣を三百年守ってる家系が…」


リョウは息を飲み、

「だったら…その人達が言ってたんだね!剣が、バンパイアキラーだって!」

「いや…」

ロバートは即座に、否定した。

「だったら…誰が!」

「確かめられないんだよ…。剣が抜けないから…」

ロバートはため息をつき、

「どんな力自慢も…機械を使っても抜けないんだよ…。大して、深く刺さってる訳でもないのに…」

ロバートは、頭を抱えた。

「どうしてなの?」

「科学的には、あり得ない。異常な魔力が、守っているとしか思えない…」

「だったら…どうした、抜けるんだよ!」

困ったような顔をするリョウを、ロバートはちらっと見ると、口元を緩めた。勿論…リョウにはわからないように。


「防人のいうことには…剣は待ってるらしい…。自分を抜ける…勇者を」



「勇者……」

リョウは無意識に、ロバートの言葉を反復した。



勇者。

その言葉が、リョウを決意させることになる。

旅立ちの日は、近い。
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