天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
黄昏の憂鬱
「〜で、あるからして、この世界は、昔から〜魔物と人間との熾烈な争いとともにありながら…このような繁栄をもたらすことが、できたのであります」

ホワイトボートに、忙しなく書き込む先生の背中を、じっと見つめながら、カレン・アートウッドは授業に参加していた。

カードシステムの崩壊により、世界の在り方そのものが、変わりつつあったが……人間そのものが、変わるはずがなく、

未だに、魔力に取りつかれていた。

それこそが、生き残る為に必要だからだ。

カードによって、レベル測定はできなくなったが、使える魔法によって、大体の力は理解できた。

護身術に近くなった魔法よりも、カレンは剣が好きだった。 

しかし、剣といえば…有名なのが、ティアナ・アートウッドのライトニングソード。 

(ティアナ…)

カレンは、苦々しくその名前を思い出した。

幼き頃は、勇者と言われ、尊敬されていた叔母は……人を裏切り、魔王の子を生んだのだ。

アートウッド家は、ティアナを勘当したが……世間の風当たりは強かった。


カレンの家は、分家だったが、地元の人々の迫害を受け、一家は離散した。

もともと跡取りは、カレンだけだったし、父は亡くなっており、病弱な母親だけだった。

その母親が、病院に入院したと同時に、カレンは養子に出された。

母親はもう…病院から出ることはできないからだ。

母親は微笑みながら、カレンに言った。

「あたしは、もうすぐ亡くなります。その前に…あなたに、我が家の家宝を譲りたく思います」


そして、病床の母より、渡されたのは、2つのもの。

一つは、アートウッド家に代々伝わり護って来た…武器。

そして…。


カレンは、つまらない授業が終わると、席を立った。


廊下に出ると、数人の生徒に囲まれた。

1人の茶髪の女が、カレンに詰め寄った。

「あんた…。黒髪に染めてるけどさ…」

女は、カレンの髪を掴み、

「ほんとは、何よ。瞳だって、コンタクトで色…変えてんでしょ?」 

絡んできた。



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