天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「フッ…」

自然に笑みが出た。

馬鹿らしい…。確かに、女の言う通りだが…。

(こちとら…うんなことわかってやってるだよ)

無礼にも髪を触っている手を、カレンは軽く払いのけた。

そして、睨むでもなく、怒るでもなく、ただ冷たい視線を浴びせた。

五人いる女生徒は一瞬、たじろぐが、すぐに威勢を取り戻した。

「あ、あたし達は、全員!契約を済ましたんだよ!」

髪を掴んだ女と、両脇の女から、風の波動が感じられた。

そして、残りの二人には、妖精がついていた。

(妖精は…炎か…)

カレンは心の中で、苦笑した。

風と炎…組み合わせはいい。

(だけどさ…)

カレンは、魔法を発動させようと威嚇している五人へ、一歩近づいた。

その瞬間、二人についている妖精は怯えだし、風はかき消された。

カレンは、スカートのポケットに両手を入れると、悠々と五人の間を通り抜けた。

(レベルが、低い!)

カレンは、口元を緩めた。


「どうしたのよ!」

女が、炎の妖精に命じても震えるだけで、言うことをきかない。

「起れ!風よ!」

髪を掴んだ女が、叫んでも風は起こらない。


カレンはただ、普通に廊下を歩いていく。

「どうしたのよ!あんな契約もすましていない女に!」

ヒステリックに叫ぶが、何も起こらない。



その廊下での出来事を、見ていた男がいた。

白髪で、結構な高齢者だが、ガタイだけはでかかった。

愕然としている老人の横を、カレンが通り過ぎた。

(馬鹿な…)

老人は振り返り、ゆっくりと遠ざかるカレンの後ろ姿を見つめた。

(妖精が怯え……空間のほんの一部の大気の流れを、指先だけで変え…風の発動を相殺しおった…)




「きゃあ!」

カレンが去った後、普通に風の魔法は発動し、五人は仲間内で、自爆した。



「どうされましたか?」

カレンの前から、1人の先生が走ってきた。

五人の様子を見て、

「こら!学校内の魔法の発動は禁止のはずよ」

と叫ぶと、すぐさま自分の精霊を呼んだ。

「カトリーナ!」
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