天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ヴァンパイア・キラー。

それは、魔王の王位が変わる時に使われる。

不死の存在である…先代のヴァンパイアを殺し、

新たな魔王になる為の王位継承者にのみ、使用することができるもの。

故に、代々その時代の王が、保管しているはずだが…。


「ティアナ…」

ライは、呟いた。

その呟きが聞こえたのか、どうか…。

ラルは、今一度頭を下げると、ライのいる空間から、闇と同化するように消えた。

ライは、そっと目を瞑った。

ティアナ…。

ライの妻であり、アルテミアの母。

もうこの世には、いない。

人間である彼女は、アルテミアやサーシャのように、精神だけを別に体に残すことを拒否した。

「人としての生は、短いわ。でも、だからこそ…人は一生懸命に生き、子孫を残すの」

ティアナの腕の中で、幸せそうに眠る赤ん坊。


「俺には、わからんよ」

ライの言葉に、ティアナは微笑む。

「あなたも、わかるわ」

ティアナは、ライに近づき、

そっと赤ん坊を渡す。

ライの腕の中で、今にも壊れそうな一つの命。


「何と…ひ弱なことか…。これで、生きてゆけるのか?」

ライの素直な疑問に、ティアナはさらに微笑む。

「大丈夫よ」
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