天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
僕の目の前で、信じられないことが起こった。

チェンジ・ザ・ハートは、僕のところには来ないで、バイラの方へ飛んでいた。

そして、バイラは二つの物体を、クロスさせると、

十字架に似た純白の剣を、手にした。

「な!?」

唖然とする僕の目の前に、バイラがいた。

一気に間合いを詰めたバイラは、僕の目を笑いながら見つめ、呟くように言った。

「シャイニング…」

僕が着ていた学生服が裂け、顕になった胸元に、十字架の傷が走り…そこから、血が吹き出した。

「ブラッディクロス」

吹き出した血が、十字架を形作ると、破裂した。


また吹っ飛んだ僕は、湖の浅瀬に転がった。


「シャイニングソード…」

バイラは、シャイニングソードを一振りすると、刀身についた血を拭い、ゆっくりと湖に近づいていく。

「バンパイアを斬る為に作られた剣…。この剣で斬られれば…不死のバンパイアであろうと…傷を癒すことはできない」


僕は何とか、立ち上がったが、血が止まらない。

「赤星!」

アルテミアの声も、今は聞こえない。

僕の瞳が赤く光り、牙が唇の端から覗かれた。

「この剣こそ…まさに、バンパイアキラー」

浜辺まで余裕で来たバイラを見て、僕はキレた。

「舐めるな!」

両手に、炎の気を集め、バイラに向かって、放とうとした瞬間、

バイラはシャイニングソードを一回転させ、水面に突き刺した。

直径一キロはある湖に、電流が走った。

バイラが突き刺した剣は、シャイニングソードではなく、ライトニングソードだった。

僕の全身に、高圧電流が流れた為、思わず…ためていた両手の気が消えた。

水の中で、両膝をついて、崩れ落ちていく僕の耳に、やっとアルテミアの声が、聞こえた。


「赤星!避けろ!」



いつのまにか上空に飛び上がったバイラの脇には、槍となったチェンジ・ザ・ハートがあった。

大気が渦を巻き、バイラの周りに集約され、電気を帯びた槍が、輝きを増していく。


それは、今まで何度も見た光景。

アルテミアの必殺技。


「Blow Of Goddess」

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