天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「アステカ人……?」

カレンは、すぐにその単語を思い出せなかった。

「そうです」

女は頷くと、立ち上がり、

「あなた様の力は、今の力をなくした人類ではなく、我らアステカ王国のもとでこそ、発揮できるのです」

力強く真っすぐに見つめる女を、

カレンはせせら笑った。

「そうか…思い出したよ」

カレンは、十字架のペンダントに手をかざすと、女を見据え、

「魔王に恐れをなして、自らの人種だけ、海の底に逃げた者どもな!」

カレンは、一気に間合いを詰めた。

一瞬で、ピュアハートを召喚すると、女に切り掛かった。

「我らは、逃げたのではありません。あなた様と同じです」

残念そうに、首を振った女は、ピュアハートの斬撃が走る直前で消えた。

「これが…超能力!?」

女がいた場所に、着地したカレンの頭に直接声がした。

初めての感覚に、カレンは目眩を覚えた。

「あなた様は、我らと同じ異能者です。そのことを、お忘れなく…」




「馬鹿が!」

カレンはピュアハートを、十字架に封印すると、虚空を睨んだ。

「あたしは、アートウッド家の汚名を晴らしたんだ!誰が、お前らの方につくか!」

カレンは毒づくと、

また平然と歩きだした。




背を伸ばし、落ち着き払って、歩きながら、

内心はいろいろなことを考え、思考を巡らしていた。

(アステカ王国……。なぜあたしの前に?)


カレンは世界が変わっていくことを、感じていた。


(一度…詳しく調べないと…)

超能力のことを。

カレンは足を止め、腕時計を確認すると、まだ学校の図書館が開いていることに気付いた。

時間もある。

カレンは、来た道を戻ることにした。
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