天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
校門をくぐった帰宅途中、普段通り歩いて帰るカレンは、先程からおかしな気を感じていた。

気付かぬ素振りで歩くカレンは、一定の距離を取りついてくる者の気を探っていた。

(魔物ではない?あきらかに、人間…。だけど)

カレンは足を止める素振りを見せずに、前に足を出しながら、瞬歩によって、

一瞬で後ろへと下がった。

後ろ歩きとも見せないその動きは、後ろにいる者を追い越したはずだった。


しかし、対象になる者がいない。

「!?」

対象者を探そうとしたカレンに、前から声がかけられた。

「山本可憐…いや、カレン・アートウッドだな?」

その声に、カレンは心の中で舌打ちした。

(速いじゃない…!テレポートか!?)

カレンとすれ違った感覚はない。

テレポートを操る人間は、珍しい。

空間移動は、特殊能力である。

(余程の妖精や聖霊と契約しないと、使えない!)


カレンは姿勢を正し、体の周りに気を張り巡らせた。

制空権。

手刀を形作り、どこから来ても叩き落とす気でいた。

カレンの佇まいを見て、前方にいる女は口元を緩め、

「今日は、あなたとやり合う為に来たのでは、ありません」

女はそう言うと、両手を広げ、丸腰であることを示すと、アスファルトの地面に跪いた。

カレンに頭を下げ、

「我々は…あなた様をお誘いに来たのです」


「誘い?」

カレンは訝しげに、女を見た。

涼しげな色合いのワンピースを着た女は、褐色の健康的な色合いをしていたが、

少し衣服から覗かれる素肌は、透けるように白い。

白人と違い…透明に近いのだ。


「類い稀なる才能をお持ちでありながら、人間社会では力を発揮できず……名を偽り、姿さえも隠す。そんなあなた様は、我らと同じ…」

跪きながら、言葉を発する女から、まったくの魔力を感じないことに、カレンは驚いていた。

(こいつらは?)

カレンの疑問に答えるように、女は顔を上げ、カレンの目を見ながら、

「異能者。我ら…アステカ人と同じ」
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