天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
悲しき再会
2つの風が混ざり、すぐに別れた。

風と表現したが、それは姿が見えなかったからだ。

微かな空気の流れが、少しだけ教えてくれた。


「まあ…」

一陣の風はアルテミアになり、嬉しそうに微笑んだ。

「合格だ」

そう言うと、消えた体のそばに、ぼおっと突っ立てるような僕がいた。 

別に、ぼおっとしているわけではない。

風の流れを少し変えただけだ。

力が抜け、いや力が入らない…というより、必要ないのだ。

「よかった…」

アルテミアの合格の声に、安堵の息を吐いた瞬間、僕はやっと体の緊張感を知った。

「まだまだだけどな…。自らの血の循環を意識しろ。指先までな。すると、疲れている場所やコリが分かる。そうすれば、負担をかけている場所がわかる。体を球のように思えば、万遍無く力を力を発揮できる」

子供の頃、ティアナに言われたことをアルテミアは思い出していた。

「だが…」

ピアスの中から、アルテミアは嬉しさを抑えながら、

「強くなった」

照れたように言った。


「あ、ありがとう…」

訓練中と違い、僕は顔を真っ赤にして、喜んだ。




「!?」

そんな幸せな空気を切り裂くように、唐突にこちらに近づいていく巨大な魔力を、僕は察知した。

それは、信じられないことに、僕の知ってる人物…いや魔神達だった。

魔神の上…女神だ。

しかし、二人の女神はアルテミアに負け、後に能力を彼女に奪われたはずだ。

だから、アルテミアは今接近してくる女神の力を手にしていた。


「赤星…。変われ」

アルテミアの言葉に頷くと、僕は呟くように言った。

「モード・チェンジ」





「お久しぶりね」

仁王立ちのように、地面に足をつけて、立つアルテミアの前に、ネーナとマリーが降り立った。

「お姉様…」

アルテミアは、二人の魔力を探った。前より、数段上がっている。

「お姉様なんて…あんたに、言われなくないわ」

ネーナは、鉤爪を伸ばし、

「あたし達がいない間…調子に乗ってるらしいわね」

マリーは腕を組んだ。


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