天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ジェーン様の容体は!」

ソリッドの怒声が、手術室に響き渡った。

ただの能力の使い過ぎと思っていたら、

違った。

「あの男との再会が、これ程の負担を与えるとは…」

それは、ソリッドにも予想外だった。

ジャスティンと会っただけなのに、ジェーンは今までの無理が一気に噴き出したかのように、いきなり衰弱しだした。

手術室で、おろおろし狼狽える医師達を、ソリッドは一喝した。

「心配するな!ダウンロードの為の依り代は、確保している」

「しかし…」

ソリッドの言葉を、主治医が否定した。

「どうしたのだ?」

普段は言い返さない従順な主治医が、今回は口を挟んだ。

何かあると思うのが、普通だ。

主治医はただ震えながらも、今の状況を伝えた。


「ジェーン様は、ダウンロードを拒否しております」

「何!?」

ソリッドは耳を疑った。

「なぜだ?肉体も若返る!力も今の肉体よりは、強力になるというのに!」


「そうなのですが…今の肉体、今の姿でないと…あの人がわからなくなるからと申しておりまして」

ジェーンの言葉を聞いて、ソリッドは顔をしかめた。

「何ということだ」

唇を噛み締め、拳を握り締めると、ソリッドは主治医を睨みつけ、

「強引にダウンロードをしろ!」

「む、無理です!」

主治医は狼狽え、

「衰えているとはいえ、王です!我々の力だけでは、抑えられません」


「だったら、我も行く!」

ソリッドは主治医を連れて、テレポートした。



手術室に入ると、凄まじいばかりの超能力の嵐が吹き荒れ、

ソリッドと主治医は壁に磔になった。

「クッ」

ソリッドは予想以上の力に驚き、テレパシーで援軍を呼んだ。


「あたしは、この姿でいいの!」

絶叫するジェーンを抑えられたのに、王国の戦士のほとんど全員の力を結晶させなければならなかった。


(恐るべし)

ソリッドは、数百人の念動力でやっとおさまったジェーンを見た。 

ジェーンは手術台の上で、今は静かに横になっていた。




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