天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
美奈子の苦悩を、そばで見つめながら、アルテミアは疑問を口にした。

「一つ気になっていた。今のあなたには、時空を越える力はなさそうだ。明菜にも…次元刀があったとしても、この世界への道を正確に繋げることは、不可能のはず」

美奈子は、アルテミアに顔を向けた。何とも言えない表情していた。

それは、怒りとも…困惑とも、後悔のようにも見えた。

「リンネだ…。リンネと名乗った魔神が、あたし達を連れてきた」

「リンネ!?」

アルテミアは眉を寄せた。

「そうだ。リンネだ!」

美奈子の口調が強くなる。

「リンネ…。しかし、リンネがどうして二人を?」

アルテミアには、理由がわからなかった。

「赤星。お前が、あたし達を呼んでいると…」

美奈子は、アルテミアを見た。

「僕…?」

黙って話をきいていた僕は、驚いた。

「赤星…変わろう」

今度は、アルテミアから僕に姿が変わった。

「どうして…」

訳がわからない僕を見て、美奈子は自嘲気味に笑った。

「今なら…わかる。それが罠だったとな」

美奈子は再び、地平線の向こうに目をやり、

「この世界に関して、あたし達は、無知過ぎた。魔法が使えるだけでなく、普通に魔物がいて…意識を乗っ取られることもある」

美奈子の瞳に、うっすらと涙が浮かんだが、それは悔し涙だ。認識の甘かった自分自身への。

「あの超能力者の女が、言いやがった。明菜は、我々に近いと…特殊なサイキッカーだと!我らの王の素材にちょうどいいとな!」

美奈子の怒りに呼応したかのように、銃が手の中に現れた。

美奈子は銃を握り締めると、銃口を地平線の向こうに突きだした。

「今は、こんな銃より、飛んでいく力がほしい」

美奈子は銃を、砂浜に叩きつけた。

「美奈子さん…」

僕は唾を飲み込むと、美奈子に近づこうとした。


「今行って、どうするつもりだ?」

ピアスからのアルテミアの声が、僕を止めた。

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