天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「アルテミア」

僕は足を止めた。

「今、明菜に会っても、あいつをもとに戻すことは、できない」

アルテミアの言葉に、僕は唖然となった。

「あれは、脳に情報をくわえたとか、暗示をかけたとかのレベルではない。脳に刻まれた皺…記憶そのものが、書き替えられた。まるで、別の脳と入れ替えたようになっていたぞ」

「だったら、どうしたらいい?」

「今はわからない。やつらの仲間から情報を聞き出さないと…。だが、やつらの国にいる人間の数を、脱出しながら探ったのだが…」

アルテミアは、身に感じた違和感を思い出していた。

「ほんの数人を除いて…意識が一つしかないだ。まるで、意識を共用する一つの生物のような…個人を感じなかったんだ」


アルテミアの感じたもの。

それが、アステカ王国が動きだした理由であることと、理解できるのは、まだ先の話である。

「とにかく…今は落ち着いて、作戦を練ろう」



「わ、わかった」

今すぐ飛んでいきたいが、明菜を取り戻す方法がわからないし、明菜を乗っ取ったジェーンは、精神攻撃を得意とする。


今すぐに、アステカ王国に行くのを諦めた僕と違い、

美奈子は納得できない。

「赤星浩一!あたしを、連れていけ!」

凄む美奈子に、僕は首を横に振った。

「今は、無理です。少し休んで、対策をたててから」

「そんな悠長なことを言ってる場合か」

銃口を僕に向ける美奈子に、僕はあたふたしてしまう。

(ど、どうしょう…)

僕は、美奈子が苦手だった。

どこか、昔のアルテミアに似ていた。

断りにくいが、美奈子に従ったら、アルテミアに怒られる。

(折角、アルテミアが優しいのに…)

僕は両手を上げながらも、何とか断る術を考えていた。



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