天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「飛べない!」

天空の女神であるあたしが、飛べない。

塔から、落下し…加速するスピードがあたしを恐怖させた。

(空で…恐怖を感じるなんて…)

昔なら、もし落下しても、死ななかっただろう。

だけど、人間の体になったあたしは、

自分が地面に激突し、肉片が飛び散るのを想像した。

「いや!」

目をつぶってしまったあたし。



だけど、あたしの体は激突することはなかった。

飛んできたチェンジ・ザ・ハートが、あたしを空中でキャッチすると、そのまま城の城壁を越え、

城を囲むように咲いている向日葵畑に、優しく着地させたからだ。

「チェンジ・ザ・ハート…」

あたしは、向日葵畑に降り立った。

チェンジ・ザ・ハートは、トンファータイプになり、あたしの両腕におさまる。


安心して、胸を撫で下ろしたが、ゆっくりしている場合ではない。

ストロングモードはいつのまにか解けていた。

「モード・チェンジ!」

また叫んでみたが、変わらない。

どうやら、さっきのモード・チェンジは、残っていた魔力の絞りカスで変身できたようだ。

「ということは…」

あたしは、走りだした。

徒歩である。

天空の女神と言われたあたしが、空も飛ばずに、自分の足で走る。

信じられなかった。

だけど、仕方がない。

今のあたしは、人間なのだ。


向日葵畑を抜けたところで、あたしは崩れ落ちた。

「なんて…疲れるんだ」

喉が乾いた。

血がほしいとは、違う感覚だ。

足が痛い。息が乱れる。


「人間って……大変」

あたしは、少し休むことにした。

天に輝く夜空を見上げた。

昔なら、星も掴めると思っていたのに…。

あたしは天に、手を伸ばした。

「遠いな…。地上とは、こんなに空が遠い場所だったんだ…」

あたしの瞳から、涙が流れた。

「お母様…」


お母様も、空に対してこんな気持ちを感じていたのだろうか。

女神として、恵まれた肉体を持っていたあたし。

それが、どんなに特別なことだったのか…。

あたしは初めて知った。

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