天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

深い闇…質量さえ、

いや、何もないのに、

闇という何もない空間に、存在感を感じた。

そんな闇の中で、さらなる闇を思わせる存在は、

その中心で、ただ目をつぶっていた。


「何のようだ…」

闇が話した。

そして、ゆっくりと瞼を開くと、空間に赤い光が、2つ浮遊していた。

その血のような瞳に、対する闇は笑った。


「何のよう?」

笑う闇もまた、瞼を開けた。

「わかっているはずだが?それとも、何か?」

闇が縁取られていく。

闇よりも濃い闇が、人の形を取る。

「お前には…もう…そういう気持ちが、なくなったのか?」

人の形を取った闇が、右手の人差し指を上に向けると、闇に光が灯った。

「ティアナだけを思う気持ちは、残し…娘への思いはなくしたのか?」



「…それは、お前の役目だろ」

明かりがついた部屋の中央で、玉座に座る…魔王。


「そうだったな」

その魔王の前に立つバイラ。

バイラは、魔王を睨む。

「だが…いや!だからこそ、お前から、返して貰わねばならないものがある」

魔王は、苦笑した。

「…フン。なるほどな。親心にでも、目覚めたか?」



「そうかもしれない!俺は、ライ!お前と違い…あの子のそばにいたからな」

バイラの3本の角が、放電し出す。

その様子を見て、ライはせせら笑った。

「お前が、私に勝てるはずがない。お前の力は、私の3分の1にも満たない」

「そうだな」

バイラは、それでも、ライから目を離さない。

ライは眉を寄せ、

「お前!?」

バイラの覚悟を感じた。



バイラの目が赤く光り、全身の魔力が上がっていく。

「お前の分身である俺は、お前に勝つことはできない!しかし、我が女神…我が娘の為に!」

バイラは、玉座に一歩足を出した。

「我が娘アルテミアの為に!」

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