天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
その声は温かく…そして、懐かしかった。

幼少の頃から、つねにそばで聞いていた声。

母であるティアナとともに、つねにそばにいた人物の声。

(ああ…)

アルテミアの心が泣いていた。たとえ…涙を流す瞳がなくても。


「最後のご奉公でございます。さあ、行かれよ!」





「バイラ!」

アルテミアの絶叫が、結界を砕いた。

その中から、目映いくらい美しいブロンドの髪を靡かせた女神が、現れた。

「うわああ!」

美しき天使の翼が、海水を猛スピードで掻き分ける。






海中から一足先に飛び出した僕を追い越し、月下の下で白い翼を広げたアルテミアの周りを、回転する二つの物体が旋回する。

「赤星!」

アルテミアは回転する物体を掴むと、両手でクロスさせた。

すると、十字架を思わせる白銀の剣になった。


「うおおっ!」

理性を失っている僕は咆哮を上げながら、空中に浮かびアルテミアに向かって突進する。

両手から飛び出した鉤爪が、炎を伴ってアルテミアの喉元を狙う。


「怒りや、悲しみに囚われるな!」

アルテミアは、シャイニングソードを握り締めると、僕に向かって急降下した。

「うわあああ!」

「あたしに、それを教えたのは!」

空中で、アルテミアと僕が交差した。



「お前だろうが!」

アルテミアの頬に、傷が走った。

僕の肩から、腰にかけて傷が走ると、鮮血が吹き出した。

「赤星!」

すると、気の暴走で黒くくすんだように変色していた肌がもとに戻った。

僕は空中で気を失い、そのままアルテミアを追い抜いて、海面へと再び落下した。

「赤星…」

アルテミアの頬についた傷は、すぐにふさがり…跡すら残さずに、もとに戻った。

「…」

アルテミアは顔を上げ、月を数秒見上げた後、

僕が沈んだ海中に向けて飛び込んだ。

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