天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「うう…」

僕が目覚めた時、そこは海中ではなく、砂浜の上に横たわっていた。


「どこだ?」

僕は上半身を上げ、周囲を確認した。

足元に、波が押し寄せて、靴の裏で弾けていた。

「何があったんだ?」

記憶が飛んでいた。

手の甲を額に当てて、頭を働かす。



「え!」

僕は思わず、立ち上がった。

頭に、皆殺しにされたロストアイランドの映像が浮かんだ。

「そうだ!僕は!」


ピアスを確認して、アルテミアを呼んだ。

「アルテミア!ぼ、僕は!」

どす黒い怒りと悲しみが、僕を包み…そこから記憶がない。

だけど、体が覚えていた。

狂い、暴れたことを。


「僕は…あれから、どうなったんだ!」

僕の叫びにも、アルテミアはこたえない。

「アルテミア!」

問いかける僕の声に答えたのは、アルテミアではなかった。



「あいつなら、もう…旅立ったぞ」

「え?」

砂浜を抉るような足音を起こして、僕のそばに近づいてきたのは、美奈子だった。

美奈子は、遠くの空を見上げ、

「すべてを終わらせる為に、飛び立ったよ」

切な気に、見つめていた。

「美奈子さん…」

僕はふらつく体に力を込め、何とか立ち上がると、美奈子の横顔に目をやった。

「アルテミアは…魔王のところへ?」

「いや…」

美奈子は、首を横に振った。

そのまま、僕に背を向けると、漆黒の海を見つめた。

そして、しばらく口を開くことはなかった。

僕も問い詰める気にはならず、海へと顔を向けた。


僕の体から力が抜けていることは、明らかだった。

いずれ回復するだろうが、今は空を飛ぶこともできなかった。

魔力がなくなっている。


僕は、自分の胸に手を当ててみた。

傷はついていないが、斬られた感覚は残っていた。

(ライトニング・ソード…いや、シャイニング・ソードか)

ぎゅっと胸を握り締めると、唇を噛み締めた。

(アルテミア…)
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