天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「数は多いが!」

九鬼は転がるようにして、魔物達の攻撃を避けながら、女の子のそばに行くと、イタチに似た魔物が伸ばした手から、女の子を奪い取った。

抱き締めて、一回転すると、九鬼は女の子を離し、

「もう大丈夫だからね」

女の子に笑顔を向けた。


「あっ!」

泣きすぎて、目が腫れた女の子に笑顔を戻った。

「九鬼だ!」

テレビ番組で、九鬼は本名で出ていた。

どうせ、異世界だ。

九鬼を知る者などいない。

「助けに来てくれたの!?」

女の子には、テレビのヒーローが助けに来たとしか思えない。

「ええ」

九鬼は頷き、

「もう大丈夫だからね」

女の子に微笑むと、ゆっくりと立ち上がり、公園の方に体を向け、女の子を背中にした。

きっと表情を引き締め、魔物達を睨む。

警官の死体を喰らっている魔物以外が、こちらに向かってくる。

妖精達は、その場から逃げた。

「数が多い!」

舌打ちした九鬼達を囲むようにじりじりと近づいてくる魔物の群れ。

女である九鬼を見て、涎をたらすものもいた。

地面に、涎が落ちると、土が溶けた。


「しかしですな~あ。これくらい倒して貰わないと、こちらとしましても、困ります。今更…人選ミスは痛いですしな」

九鬼の肩に、人形くらいの大きさになった先程のタキシードの男がいた。

「あなたは!」

魔物から、視線を離さずに、九鬼はタキシードの男に声をかけた。

「私は、月と契約したあなたの使い魔なれば…一応そばにいます」

「だったら、女の子を守って!」

「残念ながら、体の大きさを変えれる以外…私に力はありません」

タキシードの男はなぜか、胸を張った。


「チッ」

舌打ちした九鬼は、肩に乗るタキシードの男を指先で弾いた。

「だったら、邪魔だけはしないで」

「御意」

タキシードの男は回転すると、女の子の頭の上に着地した。

「いくぞ!」

九鬼は、眼鏡ケースを突きだした。


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