天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「装着!」

九鬼の声に呼応して、眼鏡ケースが開くと光が溢れた。

「うわああ!」

光に照らされてるのに、目を輝かしている女の子の目には、恐怖はなくなっていた。

その様子に、タキシードの男は満足気に頷いた。


光は一瞬だった。

その光を切り裂いた黒い足が、一番近くにいた魔物を蹴り上げた。

ふっ飛ぶ魔物。

「な!」

警官の首を切り裂いた猫顔の魔物が、絶句した。


光の中から現れたのは、黒い戦闘服を身につけた九鬼だった。

黒い眼鏡をかけ、闇より黒い服を纏った戦士。


「変身した?いや、召喚したのか!」

少したじろいだ魔物達に、猫顔が激を飛ばす。

「鎧の一種だ!恐れるな」

その声に、蛭の魔物の口が伸び、九鬼の胸に張り付いた。

そして、戦闘服を破り、血を吸おうとする。


「一応…言っておきますが、あなたは月と契約しました故に、他の精霊と契約した方のように、炎や電気を使えません!しかし!」

タキシードの男の説明の途中で、蛭の魔物が絶叫した。

吸い付いていた口の先が、消滅していた。

「しかし!月の光が使えます」

「ムーンエナジー!」

九鬼はにやりと笑うと、光る手刀を蛭の魔物の腹に突き刺した。

「月の光の効力は、闇を照らす…即ち!闇を消す」


九鬼は手刀を抜くと、一歩下がった。

すると、魔物の体は消滅した。

「この程度の下級魔物なら、一撃で消滅できます」

タキシードの男は、頭を下げた。


「な、何者だ!」

猫顔は、両手の挟みを開けながら、九鬼に突進してくる。

九鬼は両手で手刀をつくると、胸元で十字を形に構えた。

そして、前に出ると、猫顔とすれ違う瞬間、両手を広げた。

「ば、ばかな…」

猫顔の全身に亀裂が走ると、粉々に切り裂かれた。



「闇夜の刃…」

九鬼は、口元に笑みを讃えた。

「乙女ブラック!」

最後の台詞は、後ろにいた女の子が叫んだ。

嬉しそうに。


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