天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
幼なじみ
「ジェーン様!これ以上は悲しまないで頂きたい!」

次の日。

玉座に座りながらも、項垂れているジェーンに堪らず、ソリッドが叫んだ。

跪き、ジェーンに人類侵攻や対魔王軍に対する計画を述べていたが、

あまりのやる気のなさに、ソリッドは我慢できなくなった。

「あなたは、アステカ王国の王女なんだ!この王国の行く末を案じ、いかにして生き残っていくかを思案する!それが、王の勤めであります」

ソリッドは顔をしかめると、

「それを…たかが、体が変わったくらいで、落ち込まれて!」

少し感情的になるソリッドに、隣で控えているカルマがたしなめた。

「言葉が過ぎるぞ。ソリッド」

ソリッドは言葉を止め、ちらっとカルマを見た。

ずっと頭を下げているカルマに、何か言い返そうとしたが、

「チッ!」

明らかに大きくした舌打ちをすると、ソリッドは玉座に背を向けた。

「気分が優れませぬ故」

そのまま玉座の間から、テレポートして消えた。


それでもジェーンは、顔を上げることはなかった。


しばらく、無言の時が過ぎた。


これ以上いても仕方がないと思ったカルマも、頭を下げ、玉座の間から消えようとした時、

ジェーンは口を開いた。

「ここは…国と言えるのか…」

ぽつりと呟いた言葉に、カルマは顔を上げた。

「…」

言葉が出ないカルマに、ジェーンは言葉を続けた。

「まともに動ける者は、我等くらいしかいない。後は…長年の近親者同士の交わりで、種として崩壊しかけた者ばかり…」


「だからこそ!ジェーン様のように、精神を他者に入れかえ、肉体を新しく」

「フッ」

その言葉に、ジェーンは力なく笑った。

「ジェーン様…」

「だとすれば…精神は、我等かもしれないが、肉体は別物。もし、この体で子を授かったとしても…その子は、アステカの子であらず」

ジェーンは、玉座から立ち上がり、カルマの前まで歩いて来た。


「それとも、我は子を産むなというのか?」
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