天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
断ち切る絆
「アルテミア…」

僕は、海の向こうを見つめていた。

足下に、波が小さく当たって、何度も砕けていた。


「赤星…」

美奈子は、そんな僕の後ろで、背中を見つめていた。

美奈子が言わなくても、僕にはアルテミアの行き先を理解していた。



僕は、唇を噛み締めた。

アルテミアが、僕を置いていった理由もわかっていた。

今すぐ追いかけたいが、魔力が回復していなかった。

しかし、行かなければならない。

僕は拳を握りしめると、一瞬泳いでいこうかと思ったけど、

絶対無理だし、魔力も回復するはずもなかったから、諦めた。


仕方なく現実に戻り、僕は船になりそうなものを探すことにした。

立ちすくんでいる美奈子の横を、すり抜けた。


「待て!」

砂浜から出て、島の奥に行こうとする僕に向かって、美奈子は振り返ることなく、声をかけた。

僕は、足を止めた。

美奈子は、手に持っていた銃を僕に向けた。

僕は、ゆっくりと振り返った。

突きだした銃口は、僕に向けられていなかった。


「私の力は、すべて…この銃に変えた。できれば、あいつのところに、飛んでいきたいのに!私にはできない!」

美奈子は、握りしめた銃を見つめ、わなわなと震えだした。

僕は、やりきれない思いに苦しんでいる美奈子の姿に、島の奥に行くのをやめた。

再び砂浜に戻ると、僕は美奈子の手にある銀色の銃を観察した。

無数の銃口がついた変わった形の銃は、人が作ったものには見えなかった。

「美奈子さん…。僕にその銃を貸して下さい」

「ああ」

美奈子から渡された銃を、まじまじと調べてみると、

固く重く見えた銃は意外に軽く…すぐに崩れそうな程脆かった。

多分…美奈子の手から、離れたことも関係しているのだろうが…。


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