天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あんたは、もてるんだよ。生徒会長…九鬼真弓」


扉から漏れる光に照らされた2人は、同じ姿をしていた。

「貴様!」

入ってきた九鬼はもう一度、回し蹴りを放つが、

中にいた九鬼は、天井に向けて飛び上がると避けた。

そのまま、天井を突き破り、屋根に出た。

用具室は、平屋の一室であり、屋根はベニヤ板になっていた。

脆い屋根の上に、着地すると、中にいた九鬼が夜空を見上げた。

そこには、月があった。

目を細め、遥か上空にある月を見つめ、呟いた。

「月よ。そなたは美しい。しかし、闇を照らすそなたは、我々の居場所を奪った」




「貴様!」

屋根に上がって来た九鬼に気づくと、中にいた九鬼は鼻で笑った。



「お前は間違っている」

中にいた九鬼は、九鬼を見つめ、

「向こうから、来るやつを拒む理由がない。それに、やつらは人では、味わえない快楽を知って、死んでいくのだ。生物冥利につきるだろ?」

舌舐めずりをした。

「貴様らの言い方!気にくわない!」

屋根の上を走りだした九鬼は、中にいた九鬼の姿が変わったことに気づいた。

変身というよりも、姿そのものがまるで、粘土のように形を変えた。

「乙女ソルジャー!?」

それは、紛れもなく、

九鬼が、変身する乙女ブラックそのものだった。

「舐めるな!」

屋根を走る九鬼は、黒い眼鏡ケースを突きだした。

「装着!」

ケースの中から、眼鏡が飛び出し、

それがかかると、九鬼は乙女ブラックへと変身した。

「九鬼真弓!」

先に屋根に降りた乙女ブラックと、眼鏡をかけて変身した乙女ブラックが、ほぼ同時にジャンプした。


「ルナティックキック!」

2つの蹴りが空中で、交差した。


互いにいた場所に、着地した2人の乙女ブラック。


片方のブラックが着地した瞬間、ふらついて膝を屋根に落とした。

「これが…月の力か」

< 1,307 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop