天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
妖精や精霊と契約することは、それなりの対価もいるし、面倒も見なければならない。

だから、余程のことがないと、一般人は契約をしない。

雑誌の記者でありながら、妖精と契約しているということは、

後藤がそれなりの危険な場所に、取材をしていることが多い。

最近は、各出版社も直接取材はしない。

防衛軍崩壊後の払い下げられた監視式神を、記者代わりに各地に飛び回らしているのだ。






「フン」

先日殺しのあった場所近くまでテレポートした後藤は、カード残高を見て、鼻を鳴らした。

「テレポートの高いこと」

軽く肩をすくめると、

「まあ…いいか〜。会社のカードだしたな」

にっと笑った。

高等魔法であるテレポートを使うには、空間を認識する能力が必要だった。

何も知らない人間が使うと、とんでもないところに出てしまう。

昔は、物質融合して死亡など多かったが、

最近はテレポートアウトと同時に障害物と重なる場合は、破壊するシステムが発動するようになっていた。

しかし、人や個人の所有物を破壊する可能性がある為、使用者は制限されている。

それは、あくまで…素人の問題であり、

歴戦の勇者や、レベルの高い者には、関係なかった。


後藤はかつて…防衛軍に所属していたのだ。


テレポートアウト後、歩き出すと、

頭の上に、各社の式神が飛んでいることに気づいた。

「ケ」

後藤は顔をしかめると、現場へと急いだ。


後藤達が知っているということは、

警察は勿論知っている。

もう現場は、封鎖されており、近づくことはできない。

野次馬の向こうにいる警官達のさらに奥に、

シートで隠された被害者の遺体があった。


後藤はじっと、遺体を見つめると、自分の上着の中に隠れている妖精に声をかけた。

「アイ…出番だ」

後藤はにやりと、口元を緩めた。

「ここでやるの?」

上着の中から顔を出した猫目の妖精が、後藤を見上げた。

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