天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「待て!」

梨絵の動きを、リオは腕を横に伸ばして、遮った。

「お姉様!」

驚いた梨絵を見ないで、リオは九鬼に笑いかけた。

「九鬼さん…。今日呼び出したのは、他でもないの。本当は、あなたに会わせたい人がいたのよ」

リオの視線が、九鬼の後ろに向いた。

「何?」

九鬼は軽く後ろを見て、


絶句した。

「理香子!?」


屋上の階段の影から、姿を表した女に、九鬼は一瞬だけ目を奪われたが、

すぐに気を取り戻した。

この世界で、似てる人間に出会うことは多い。

「チッ」

舌打ちすると、リオの方に視線を戻した瞬間、

九鬼は腕をクロスさせた。

光を纏った拳が、九鬼に迫っていたのだ。

拳の軌道を読み、何とか乙女ケースを盾にして、生身への直撃は避けたが、

九鬼の体はふっ飛び、屋上のフェンスを突き破ると、そのまま…地上に向けて、落下していった。


「あはははは!」

光輝く戦闘服を着たリオは、楽しそうに大声で笑った。

「お前達…乙女ソルジャーと違い!あたし達、乙女ガーディアンは、乙女ケースを構えなくても、変身できるのよ」


乙女ソルジャーの上位種である乙女ガーディアン。

リオが変身したのは、乙女ダイヤモンドである。

鉄壁のボテイと、すべてを破壊する拳を持つ…月影の中でも、最強の力を持つ。

「いかに九鬼真弓であろうとも、この高さからは無事にはいられまいて!ハハハ!」

笑いが止まらないリオの後ろから、

黒い影が屋上に飛び込んできた。


「お姉様!」

自分の真横を、風のように吹き抜けた黒い影に、

梨絵は絶叫した。

「な!」

リオは目を見開きながらも、振り向きながら、腕を突きだした。

ダイヤモンドの腕で、乙女ブラックの飛び蹴りを受け止めた。

「わ、忘れていたわ!乙女ブラックの特性は、スピード!」

片腕で蹴りを受け止めたリオは、少し後退りながらも、体勢を崩すことはなかった。

「舐めるな!」

腕の力だけで、ブラックの蹴りを弾き飛ばした。
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