天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「チッ!」

舌打ちすると、響子はカレンの方を見た。

少し考えた後、響子は頭をかいた。


「思い通りには、ならないか」

溜め息をついた時、


最後の授業を告げるチャイムが、校内に鳴り響いた。


「放課後まで…考えるよ」

響子は乙女ケースを、ポケットに突っ込むと、扉に向けて歩き出した。




「な、何だ!今のは!」

響子の姿が、屋上から消えた後、

カレンは毒づいた。

明らかに、カレンに渡そうと悩んで、辞めた。


「仕方あるまい」

ジャスティンも歩き出した。

カレンを見ないで、

「お前にはまだ…覚悟がない。この月影バトルに参加するな」


「何!」

カレンはキレた。

乙女ケースを握りしめ、

「わたしは戦士だ!戦いからは逃げない!」


「わかっている」

ジャスティンは頷いた。

「だったら!どうして!」

カレンの叫びに、ジャスティンは扉を見つめながら、答えた。

「この戦いは…人間同士の戦いとなる」

「だ、だから?」



ジャスティンは、ドアノブに手を伸ばすと、

握りしめた。


「お前に、人を殺す覚悟があるのか」

「え…」

カレンの動きが止まった。


「咎人になる覚悟が」



と…ジャスティンは言った後、目を瞑った。

「いや…違う」

ジャスティンは、首を横に振った。

そして、


「お前がなりたい…勇者は、人を殺さない」


ジャスティンはゆっくりと…ドアを開けた。



「少なくとも…お前の叔母であるティアナ・アートウッドは…」

ジャスティンは目を開けた。

「殺さなかった…」




そういうと、ジャスティンは扉の向こうに消えた。




「人間を…殺す?」

カレンは、赤の乙女ケースに目を落とした。


その時のカレンは、


まだ…


月影の真実を知らなかった。
< 1,382 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop