天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
目を開いたまま…動かないリオに、

理香子はフッと笑った。


「少しは…資格があるか」

そう呟くように言うと、理香子は突きだした拳から、中指だけを立てた。


リオの眉の間に、指をつけると、

理香子は口元を緩めながら、

リオに告げた。


「汝に、ガーディアンの資格を与える」

理香子の変身が解け、乙女ダイヤモンドのケースが、空中に浮遊した。

「月の為に、戦え」


それだけ言うと、理香子は指をリオから離した。

その瞬間、

ダイヤモンドの乙女ケースは、下に落ち、

理香子の瞼も落ちた。


カクンと頭を落とすと、理香子の動きが止まった。

あれほどあった威圧感もなくなり、

呪縛から解けたように、リオの緊張もなくなった。

体の自由を得た瞬間、リオは片足を地面につけた。



「一体…何が」

リオは背中で激しく息をしながら、

地面に落ちている乙女ケースを見つめた。





「理香子!」

リオは顔を上げ、そばに立つ理香子を見上げた。


理香子は、目を開いた。


リオは乙女ケースに手を伸ばしながら、

理香子の様子に注意した。



「……」

理香子は再び無言になり、

虚ろな目で見下ろしていた。

リオと目が合ってるはずだが、

その瞳にリオは映っていない。



「中島…」

声にならない程の微かな声で、理香子は呟いた。


その時だけ…理香子の瞳は潤んだ。

涙をこえた…悲しみの影をたたえて。






(中島…)

リオは、理香子の瞳に目を奪われながらま、

心の中で呟いた。

なぜなら…口に出しては、いけないと、本能が告げていた。

そして、心の奥で、

さらなる疑問が沸きだしていたが、

まだリオは自覚できなかった。


その疑問とは、



月影とは何のか。



この力は、人類の為になるのか。


しかし、沸き出た疑問よりも、理香子の深い悲しみがリオをとらえていた。


それは、リオが女だからかもしれないが…。
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