天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「闇の女神の使徒である貴様が、なぜここにいる!」

九鬼は右手を祈るような形で突きだすと、

タキシードの男との距離を図った。


「いや〜あ、単なる野暮用でもよ」

タキシードの男は、能天気な感じで、九鬼に笑いかけていた。

「チッ」

相変わらずの様子に、九鬼は舌打ちした。

だけど、そんな笑顔には騙されない。

九鬼はじりじりと、間合いを少し詰めた。

いつでも、蹴りを放てるように。


「あなたも…相変わらずですね」

九鬼の様子に、タキシードの男は肩をすくめて見せると、言葉を続けた。


「我が女神の復活により、月が急いでいるのですよ。自分の力を受け継ぐことのできる…戦士を選ぶことを」


「月が急いでいるだと!?」

九鬼は蹴りを放とうとしたが、その動きを察知したのか、

タキシードの男は消えた。

「フン!」

その行動をよんでいた九鬼は、蹴ろうとした足を軸にして、バックアンドブロ−を後ろに叩き込んだ。


当たったと確信したが、


九鬼の拳は空を切った。

「チッ」

九鬼は舌打ちした。

「危ない、危ない」

30センチくらいの大きさになったタキシードの男が、にやにや笑いながら、

九鬼を足元から見上げていた。


すぐに、踏みつけようとしたが、

タキシードの男は消えた。


そして、声だけが辺りにこだました。


「この結界は、乙女ソルジャーの勝利者が決まるまで、消えることはございません」

「どこだ」

九鬼は周囲を見回したが、タキシードの男の気配はない。
「ククク…」

タキシードの男は笑い、

「それに、我々闇も、少し趣向を凝らせて頂きました」

「く、くそ!」

「この結界を利用し、我ら闇の粒子をばらまかせて頂きました。かつて、デスパラード様とともに、月に封印された闇の眷族の魂を!」

「き、貴様!」

「さすがですね。もう理解しましたか」

「そうか!あれは」

九鬼の脳裏に、廊下で出会った女生徒の姿が、よみがえる。
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