天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
好きっていう言葉で縛られて、がんじがらめになっても、うまくいかないかもしれない。 

だったら、あたしは、


嫌いにさせよう。


そう嫌いにさ。


あたしこと…相原理香子は、好きな人がいた。




「おい、こら!中島!襟が曲がってる」


席について、友達と談笑している中島新一の後ろから、

あたしは少し捲れている襟を、指差した。


昔から、世話好きというか…お節介には定評があった。

(よく弟から、うっとおしがられたものよ)

あたしは、あたしを知っている。

それに、男ってやつは、こんなぐちぐちいう女は、嫌いなはずだ。


好きだ。好きだ。 

と思いながら、遠くなら眺めているくらいなら、

こういう風に細かく注意をして、嫌われながらも、近くにいる方がいい。


だけど、注意する時や、話し掛ける時は、

基本後ろからだ。

前は、危険だ。

目があったら、どうするのよ。


注意して、中島が襟をなおすのを確認すると、

「よし!」

とえらそうに言いながら、親友の九鬼のそばに行くと、

人に見えないように、俯きながら、真っ赤な顔を隠して、

「今日も、話せた…」

軽くガッツポーズをとるあたしに、次の授業の予習をしていた九鬼は、教科書を閉じると、

「よくわからないが…どうして、後ろからなんだ?」
首を傾げた。

生徒会長で、堅物の九鬼には恋愛がわからない。


あたしは、がばっと顔を上げ、 

「目が合うでしょ!」

と言おうとした瞬間、友達と話す中島の横顔が目に入り、

思わず真っ赤になり、それに気付いて、あっちむいてほいをやってるかの如くの速さで、横を向いた。

「うん?」

九鬼は、さらに首を傾げた。
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