天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何!?」

目を見張った九鬼は理由を考える前に、跳んだ。


「ルナティックキック!零式」

しかし、九鬼の蹴りは見えない壁に弾かれた。

「フッ」

哲也は唇の端を歪めた。

「その力は!」

九鬼は、跳ね返ったこと自体に驚いてはいなかった。

今の蹴りで確信した。

しかし、導かれた事実が信じられないのだ。



「どうした?九鬼真弓」

攻撃を止めた九鬼を、哲也は含み笑いを漏らしながら、見つめた。

「チッ」

舌打ちすると、九鬼は構え直した。

「ほお〜。理解したようだな」

哲也は、警戒しだした九鬼のように、感心した。

「だが…疑問が残っているな?なぜだ!なぜなんだ!どうして何だ!」

哲也は両手を広げ、クククと笑った。

「答えなんて、簡単だよ。男と女の境界線など、染色体の少しの違いだけだ」

哲也の来ていたブラウンのスーツの袖から、一本の注射器が出てきた。

「我が防衛軍の魔学の力を借りれば…その壁を破壊するのは容易をことだ」

哲也は目を見開くと、注射器の針を自分の首筋に刺した。

その瞬間、哲也の胸が盛り上がる。

「装着!」

哲也は注射器を抜くと、叫んだ。

その瞬間、眩い光が哲也を包んだ。

そして…。



「これが、月の女神が我に与えた力だ」

プラチナに輝く戦闘服に身を包んだ哲也がいた。

はち切れんばかりの胸に、引き締まったウエスト。

その雰囲気は、娘のリオに似ていたが、哲也の方が引き締まっていた。



「乙女プラチナ…」

普段は、理香子が身に纏う戦闘服だか、今は男であった哲也が纏っていた。


「どうする?乙女ブラック」

突然、目の前に哲也の顔があった。

「!?」

気を抜いていた訳ではない。

ずっと距離感を計っていたのに。

見ていたのに、哲也がいきなり目の前にいたのだ。
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