天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「な!」

九鬼は慌てて、移動したが、哲也はずっと目の前にいた。

「どうした?九鬼真弓…顔色が悪いぞ」

哲也は笑い顔を近づけた。

「クソ!」

九鬼は顔をしかめると、スピードをアップした。

グラウンドの端で、九鬼達の姿が消えた。

「馬鹿な!」

九鬼は信じられなかった。

目にも止まらない動きで移動している自分が、目の前にいた哲也を見失ったのだ。

「思い上がらないことだ」

九鬼の耳元で声がした。

「月影で、一番速いのは、乙女ブラック…貴様ではないわ!」

哲也の口から放たれた気合いが、九鬼の背中に当たり、吹き飛ばした。グラウンドの土を抉り、九鬼は地面を転がる。

「く!」

顔をしかめ、すぐに何とか体勢を整えたが、また哲也を見失った。

「上だ!」

九鬼の頭上に、哲也が浮かんでいた。

拳を重ね、月にかざすと、赤く燃え上がった。

「プラチナボンバー!」

拳を振り下ろすと、拳の形をした光の玉が、九鬼目掛けて落ちて来た。

「チッ」

九鬼は慌てて、後方にジャンプした。

立っていた場所の地面が抉れ、そこにあった土が消滅した。


「だから言ったはずだ」

九鬼の着地地点に、哲也がいた。

「貴様より速いと」

哲也のバックバンドが、九鬼を着地する前に叩き落とした。

「きゃ」

肩から地面に激突した九鬼の悲鳴に、哲也は満足げに頷いた。

「そうだ!それでいい!泣くがよいわ!か弱い子猫のようにな」

「ク、クソ!」

悲鳴を上げてしまった自分を悔いるように、すぐに立ち上がった九鬼は、拳を握り締めると、ジャンプした。

「無駄だ!」

乙女プラチナの全身が輝き、光だけで九鬼を弾き飛ばした。

今度は、悲鳴を上げなかったが、地面を転がる九鬼。

「乙女ダイヤモンド程のパワーがないが」

一瞬で移動した哲也は、転がる九鬼の髪を掴むと、強引に立たせ、腹を殴った。

「それでも!貴様より上だ!」

「ぐわあ!」

九鬼の口から、血が吐き出された。
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