天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「馬鹿め!これくらいの蹴りで、我にダメージを与えられるものか!」

空中でよけることもできず、九鬼の蹴りを喰らったが、哲也に痛みはなかった。

蹴りの勢いで、少し飛ばされたくらいだ。

「無駄な!あがきを!」

空中で、はははっと笑った哲也の顔が変わった。

後ろから、眩しい光を感じた哲也が振り返ると、

すぐにそばにガンスロンの砲台があった。

「お父様!」

真下で、リオが絶叫した。

「ば、馬鹿な…」

哲也が唖然とした瞬間、ガンスロンの砲台から放たれた光の束は、哲也を直撃した。

何とかプラチナの光を放ったが、ガンスロンの攻撃はプラチナの光を飲み込み…そのまま、前方の町並みに炸裂した。


巨大な光の玉が、結界内にでき、結界内の三分の一の土地を消滅させた。



「そ、そんな…」

九鬼は、乙女プラチナの体を盾にしたつもりだった。

なのに、防ぐことはできなかった。

少しは、威力を抑えたかもしれないが、 砂漠のようになった町並みを見ると、まったく意味がなかったことを知った。

「クソ!」

しかし、九鬼に悔やんでいる暇はなかった。

ガンスロンはもう片方の砲台を、建物が残っている方に向けたからだ。

もう砲台の先端は、光っていた。

「これ以上は!」

九鬼は走り出した。


「お父様…」

両膝を落とし、崩れ落ちているリオのそばを駆け抜け、九鬼は砲台の先に向けてジャンプした。


「月よ!あたしに力を!」

ムーンエナジーが集束する砲台の先端まで、飛び上がった九鬼は戦闘服を脱ぎ捨てた。


「乙女ブラックのすべての力で!」


戦闘服は丸く塊になると、今度は風呂敷のように広がった。

反射版。

九鬼が作ろうとしたのは、それである。

月のムーンエナジーでコーティングすれば…同じムーンエナジーを纏っているガンスロンのエネルギー波を、反射できるはずだ。

跳ね返すまではいかなくても、軌道くらいは変える。

九鬼が、反射板となった戦闘服を調整する間もなく、二発目は放たれた。
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