天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「な、何だ?」

体育館の屋根を突き破り、床まで落ちていくカレンは、ブラックカードを発動させると、ふわりと着地するはずだった。

それなのに、グラウンドから吹いてくる風に煽られて、カレンは転けそうになった。

「この風は…」

カレンは、床に足をつけて、バランスを整えた後、吹き抜けてくる風を感じた。

濃度が濃い。

「魔力の風!?」

その風の匂いを嗅ぐだけで、カレンは全身が震えた。

また嫌な記憶がよみがえってきた。

「チッ」

そんな自分自身に舌打ちすると、カレンは体育館の床を蹴り、走り出した。

「あたしは、逃げない!」

体育館の扉を、体当たりで開けると、階段になっている入口を飛び越え、コンクリートの道に着地した。

と同時に、右に飛んだ。

グラウンドの方へ。

「ロボットが、破壊されている?」

巨大な足で踏みつけられたように、ぺちゃんこになったガンスロンは左腕と頭だけが、原型を留めていた。


「一体何が?」

素早く状況を判断しょうとしたカレンの目が、理香子の前に立つ人物をとらえた。

「誰だ?」

ブロンドの髪を風に靡かせて、ただ佇むだけの女の後ろ姿を見て、カレンはなぜか…巨大な大木を連想した。

その瞬間、女は振り返った。

柔らかな微笑みをたたえた横顔を見た時、カレンは死んだ母親を思い出した。

「お母様…」

カレンの頭に、母親の記憶がよみがえった。


そんなカレンに、女は口元を緩めた。

「え」

女の瞳が赤く光り、それを映すカレンの瞳から脳に閃光が走った。

カレンは勢いをつけたまま、前のめりに倒れた。

土を抉り、そのまま意識を刈られた。


「これで…邪魔者はいないわね」

理香子の前に立つ女の手には、赤の乙女ケースがあった。

「あなたが作った力を頂く」

女が乙女ケースを握り締めると、ケースは消えた。

「ついでに…あなた自身の力もね」

女は微笑みを増した。

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