天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ソナタが…天空の女神か」

理香子は、前に立つ女を見つめた。

上から落ちてきた女は一瞬で、ガンスロンを破壊した。

そして、何事もなかったかのように、理香子の前に着地した。


着地の瞬間、ブロンドの髪が、ふわり広がった。

理香子に微笑んだアルテミアは、赤の乙女ケースを拾うと、握り締めた。

「月の女神…あんたが、人間に与えた力。すべて、手に入れたわ」

乙女ケースの色が変わる。赤から、黒、黄色、緑、ピンク、青。

そして、白になると消えた。

「…」

理香子は無表情に、乙女ケースを見つめていた。

そんな理香子の反応を確認し、アルテミアはきいた。

「どうしてだ?伝説によると、人間を守る為に、この世界を棄て…人間の為の世界をつくり、月となって人間を見守っていたお前が、どうして人間を殺そうとする?」

「…」

理香子はこたえない。

アルテミアは、軽く舌打ちすると、

「それほど…憎くくなったのか?人間が」




「フッ」

少しの沈黙の後、理香子は笑った。

そして、おもむろに口を開いた。

「…この世界に、あの人の血筋はいない」

「?」

アルテミアは眉を寄せた。

理香子は、ゆっくりと話し出した。

「この世界の人間には…もう…愛情がないの…」

「この世界?」

「あたしと…あの人の子孫は、向こうの世界にいるから」

理香子の言葉の意味を、アルテミアは理解してきた。

「貴様…」

「あたしはもう…本当は、人間なんてどうでもいいの…。なぜなら…あたしの愛した人はいないから」

理香子の瞳から、涙が流れた。

「お、お前!」

唐突の涙を見て、アルテミアが戸惑った一瞬の隙を、ダイヤモンドの剣が切り裂いた。

アルテミアの肩から腰にかけて、斜めに線が走ると、鮮血が噴き出した。


「あの人を殺した人間が、憎い!」

理香子は、もう一度剣を振るおうとした。

「なめるな!」

アルテミアの指から、雷撃が放たれた。

しかし、ダイヤモンドの盾が攻撃を防いだ。
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