天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「お前は…」

アルテミアは構えを解いて、周囲を睨む理香子を見つめた。


「ぎえええー!」

突然、ガンスロンの攻撃で開いた結界の外から、無数の黒い影が、アルテミア達を囲むように落ちてきた。

「こいつらは」

アルテミアは、影達を横目で睨んだ。

数百はこえる魔物が、大月学園のグランドに降り立った。

「天空の女神!そして、月の女神よ!我が主の命により、貴様達を討つ」

白銀の甲冑に耳を包んだ魔物が、脈打つ剣を突きだした。

「ライの兵か?」

アルテミアは、甲冑の魔物にきいた。

「そうであるが、今は違う。ライ様の留守を預かっておられるリンネ様と、闇の女神のナイトだ」


「リンネ?」

アルテミアの片眉が、はね上がった。

「問答は無用だ!我々とお前達の間にな!」

魔物達は一斉に、アルテミアと理香子に襲いかかった。





「何なの?」

破壊されたガンスロンのそばで、気を失っていたリオが目覚めた時、目の前は魔物達で溢れていた。

魔物達は、リオを気にはしていないとはいえ…戦う力を失ったリオにとっては、恐怖しかない。

「ヒィィ」

ガンスロンの残骸に隠れて、逃げようとするリオを…後ろから何かが掴んだ。

「え」

リオの体を軽く持ち上げたのは、ガンスロンの左腕だった。

「オ、ネエ…サマ…」

何とか原型を留めていたガンスロンの目が光った。

「タ、ス、ケテ…」


「梨絵!」

リオは絶句した。

ガンスロンは、人間と同じように腕などを使う為に…人間の脳を組み込まなければならないのだ。

「ま、まさか…まだ意識が…」

リオが絶句した時、ガンスロンの目が赤く光った。

「ア、アタシ…ニンゲンニ…モドリタイ」

「無理よ!あなたは!」

「オ、ネエサマ…」

ガンスロンの目の光が消えていく。

すべての活動が停止する前に、ガンスロンは最後の動きを脳から腕に伝えた。


「ぎゃああ!」

握り締めた腕が、グランドに落ちた時…ガンスロンは活動を終えた。
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