天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「防がれた!?」

アルテミアは、後方に距離を取ろうとした。

しかし、いつのまにか後ろに移動した理香子が待ち構えていた。

すらっと長く細い足が鞭のようにしなり、アルテミアの背中を打とうとした。

しかし、理香子の動きを背中で察知したアルテミアは、空中で反転して膝で受け止めた。

「フン!」

理香子の足は、防御したアルテミアの体ごと吹き飛ばした。


「スピードだけでなく…パワーもあるのか」

何とか着地したアルテミアは、理香子の実力を知り、表には出さないで、驚愕していた。

人間の肉体での限界を超えている。

アルテミアは一瞬、人間へのモード・チェンジを解き、本来の女神の力で戦おうかと思ったが、その考えを否定した。

なぜなら、理香子が人間の肉体を使っているからだ。

3つの乙女ガーディアンの力で守られているとはいえ、戦闘服の中身は、紛れもなく人間である。


痺れる膝の痛みを感じながらも、涼しい顔をしたアルテミアは、理香子を見つめ、

「いいのか?お前の体は、人間のままだろ。このまま戦えば…」

「そういう話は、あたしに攻撃を当ててからいいなよ」

理香子は鼻で笑った。

「なんだと!」

アルテミアは軽くキレた。

「それに…あたしのこの姿こそが…あたし自身なの」

理香子は、天を見上げた。

「あの人が知ってるあたしこそが、あたし自身なの」

そして、ゆっくりと顔をアルテミアに向けると、

「月の女神…相原理香子こそが、あたしの名前」

笑いかけた。

アルテミアは、理香子の嬉しそうな顔に見とれてしまった。

幸せそうな笑顔。

しかし、その笑顔はすぐに崩れ去った。

「それなのに!あいつが!あの女が!あたしの幸せを奪った!」


理香子の脳裏に、中島を殺す乙女ブラックの様子がプレイバックし出す。

「許さない!」

理香子は鬼の形相になると、アルテミアを無視して、周囲見回した。

「どこだ!どこにいった!真弓!」

理香子には、アルテミアが映らない。

「九鬼真弓!!!」

理香子は絶叫した。
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