天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「クッ」

九鬼は顔をしかめた。

「さあ!あたし達に罰を与えたお父様も、先代の魔王に滅っせられた!今の魔王もいない!」

デスペラードは興奮していた。

「あなたの肉体を媒介にし、あたしと融合すれば!月の女神も、天空の女神も超える最強の女神になることができる!」

「断る!」

九鬼は、デスペラードの手を払った。

すぐに立ち上がると、

「闇の力に頼ることはしない!」

デスペラードを睨み付けた。

「そんなことを言っていいのですか?」

九鬼の後ろに、タキシードの男がいた。

「月の女神が殺されますよ。天空の女神に」

「何!?」

驚き振り返った九鬼に、タキシードの男はにやりに笑った。

「今の天空の女神に勝てるのは…あなただけです」

「くっ!」

九鬼の頭に、アルテミアと対峙する理香子の姿が映った。

「どうされますか?九鬼真弓様」

タキシードの男は頭を下げると、九鬼に向かって手を差し出した。そこには、乙女ケースがあった。

「チッ!」

九鬼は舌打ちすると、迷いを断ち切るように、タキシードの男を奪い取った。


「そうです!それでいいのです!」

タキシードの男は、両手を広げた。

デスペラードも笑うと、九鬼の体に後ろから重なった。

「うぐぅ!」

九鬼が嗚咽すると、手にした乙女ケースから闇が溢れ出し、全身を包んだ。


「ついに来たのだ!神話の時代より、待ち続けた…復活の時!今こそ!光は、闇に消されるのです!」


一度…ガクッと膝を落とした九鬼は、ゆっくりと立ち上がった。

乙女ブラックに似たその姿は、闇よりも黒く禍々しい色をしていた。
< 1,548 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop