天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「でしゃばるな!」

理香子とアルテミアに襲いかかった魔物達は、一撃で全滅した。

アルテミアが、手刀を振るっただけで…。



「な!」

その魔力を目の当たりにした理香子は思わず、後ろにたじろいだ。

そんな理香子を、アルテミアは横目で見つめた。

「あり得ない…。今の力は」

理香子の足が震えた。

アルテミアはそんな理香子を見て、一度目を瞑ると…ゆっくりと開いた。

それから、理香子に体を向けると、歩き出した。

「あり得ない!」

唇の端をきゅっと結ぶと、理香子は踏み留まった。

足に力を込めると、ダイヤモンドの剣を突きだした。

アルテミアはダイヤモンドの剣を避けることなく、その刀身を左手で掴んだ。

手から血が流れ落ちたが、アルテミアは気にせずに、理香子の目を見つめ続けた。

「くそ!」

びくともしないダイヤモンド剣を諦め、プラチナのブーツで神速をこえようとする前に、アルテミアの手から放たれた雷撃が、剣を伝い…理香子の体を痺れさせた。

「きゃあ!」

崩れ落ちそうになる理香子を、アルテミアは掴んでいる刀身を上げることで無理矢理立たせた。

「月の女神よ。お前は、あたしに似ている」

アルテミアは、理香子を見つめ続け、

「だけど…根本的に違う」

さらに刀身を握り締めた。

「お前は、愛する者を失った悲しみで狂っているだけだ。あたしは、違う!」

アルテミアの右手が輝く。

「あたしは、愛する者を取り戻す為に!戦っている!」

アルテミアの右手が、理香子の心臓を貫こうとする。

「例え!あたしの行為を、あいつが許さないとしても!」

正確に、心臓を貫いたアルテミアの右腕。

「な!」

「え」


しかし、貫いたのは…理香子の体ではなかった。


「間に合った…」

口から血を流しているのは、乙女ダークとなった九鬼真弓だった。
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