天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「父さんか…」

轟はゆっくりと、その場で崩れ落ちた。

走り寄ろうとするサーシャを、轟は制した。

「ただ…身よりのないお前を育てただけだ…」

フッと笑うと、轟は立ち上がり、槍を捨てると、サーシャに自ら近づいてくる。

「どうやら…魔王の呪縛が…解けたようだ」

言葉を発せず、ただ泣くサーシャの肩に手を置き、轟は微笑んだ。

「強くなったな…」

「父さん…」

「できれば…生きていてほしかった…」

轟の目に、涙が浮かんだ。

そして、それを拭うことなく、轟はサーシャの瞳の奥を覗いた。

「ロバート!こいつを愛してるなら…戦いの呪縛から、解放してやってほしい…もうこいつは、死んでいるのだ!」

「父さん?」

轟の手に、力がこもる。

「愛してるなら…安らかな眠りを与えてやってくれ……頼む」

轟は、頭を下げた。

「父さん!あたしは…」

「人は生きてこそ…愛し合える…。今は縛り付けているだけだ…。君も、分かってるはずだ…ロバート…ぐはっ!」

轟の口から、血が吐き出された。

「お父さん!」

倒れそうになる轟を、抱きしめ、支えたサーシャに、

轟は言った。

「ロバートに変わってくれ…」















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