天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「誰…?」

僕は、引き金に手をかけながら、震えが止まらない。頭に響く声には、聞き覚えがあった。

(あの子はもう…人ではありません。もう、もとにもどすこともできません。今のあの子を止めているのは、格闘家としてのプライドだけ)

僕はもう一度、ジュリアンの瞳の中を覗いた。

やはり、涙が見えた。

(涙が見えるのなら…)

響く声も泣いていた。

(あなたは、やさしいのね)

僕の緊張が解けてくる。

(だっだら…尚更、お願い)

僕は目をつぶった。銃口だけは、ジュリアンから外さない。

(撃って)



「うわあああああっ!!」

引き金を引いた。


巨大な炎と雷…それと、人の悲しみが、ジュリアンを直撃した。勝負は一瞬でついた。

僕は、両膝を地面に落とした。

震えが戻ってきた。チェンジ・ザ・ハートを落とし、僕は泣いてしまった。

「僕は…僕は…人を殺してしまった」

嘆き苦しみだす僕に、誰かが後ろから近づいてきた。

僕のすぐ横で立ち止まり、

「君が殺したのは、人ではない。人の姿をしていても、化け物だよ」

「ロバート…さん」

僕のそばに来たのは、ロバートだった。

ロバートは、ジュリアンが立っていた場所に、歩きだした。

「化け物さ」

黒ずんだ地面を蹴り、存在したことさえ、消し去ろうとする。

「ロバートさん」

ロバートはフッと笑うと、僕の方を見た。

「赤星くん」

ロバートの口調は、いつもよりどこか威圧的だ。

「君は強くなった。魔神クラスも倒せる程に…もうアルテミアも必要ないくらいに」

ロバートはまた、僕に近づいてくる。

「ロバートさん…どういう意味?」

ロバートの言葉が理解できない。

「わかるはずだ。人は人としか、生きていけない」

ロバートの瞳が、怪しく光った。そして、僕に向けて手を伸ばした。

「渡したまえ。指輪を」

「ロバートさん…?」

ロバートはにやりと笑い、

「君がいれば、アルテミアなどいなくていい。よければ…君を、安定者の次期候補に推薦してもいい」







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